かたくり

かたくり

 

数年前、西上州某所の山中を歩いてた時、まったく偶然に見つけたかたくりの自生地を紹介する。

昔は里の山のどこでも見られた花らしいが、いわゆる愛好者の乱獲・乱掘のため自然の姿は滅多に見られなくなった。

ここは私だけの秘密の場所としておこう。

  

かたくりの自生地1斜面の自生地
春、他に先駆けて芽を出し、パッと咲いていつの間にか散る。
花期は平地で桜の咲く前後、山地で2〜3週間遅れくらい。
けっこう大きく育つ葉も夏までには影も形もなくなり、初春の時期だけの花でもある。

かたくりの自生地2すぐ近くの別の群落
こちらも満開状態だった。

今年(2000年)の自生地2000年の状況 
あれから数年、最初の写真と同じ場所。
訪ねると花は一つも無し。時期を間違ったかとよく見たら、なんと花芽がことごとく摘み取られたように無くなっていた。付近は下写真の足跡だらけ。
どうも鹿の食害を受けてる様子。かたくりって種で増える植物のはず。今年はこれでは実を付けられないだろう。それに花を付けなくても来年また咲くのかなあ?ちょっと心配。
 

2001年の群生地←2001年今年の群生地
昨年は↑の状況で心配したが今年は見事に復活。
葉の様子から見ると昨年は時期的にもちょっと早かったみたい。
但し↓のような足跡は今回もいっぱい。

鹿と思われる足跡鹿と思われる足跡
付近の至る所にあった足跡がこれ。2本爪の足跡は5cm×6cmくらい。
 

食害を受けたかたくり食害?を受けたかたくり 
こんなふうに花の部分だけ無くなっている。これから咲くまだ半分隠れた小さなつぼみはいくつか残っていたが、大きなつぼみや花は一つも無かった。
 

かたくり3年生今年新たに発見した自生地 
これは離れた別の場所で昨年新たに発見した自生地。
パッと見でそれでもかるく200株くらいはあっただろう。もっとも多くは写真のような3〜4年生くらいの若芽で、花を付けるまでにはまだ数年かかりそう。
 

かたくり
可憐を絵に描いたような立ち姿がいい。
両手を後ろに反らしたニケ(NIKE=勝利の女神。首のない彫刻の「サラトマケのニケ」が有名。ナイキの社名はここからとった。たぶんあのロゴマークも。)のようにも、同じく両手を頭上に伸ばしたバレリーナのようにも見える。

花も葉も根もすべて食用。特に根(鱗茎)からは良質のデンプンが取れ、片栗粉の語源となった花である。
見た目の美しさが盗掘・乱掘の原因となり、尚かつ食用にも美味とあっては、あっと言う間に自生地がなくなったのも無理はない。
そう言えば子供の頃近くの山のどこにでもあったシュンランも、ランブームと共に最近はまったくと言っていいほどなくなってしまった。

多年草のかたくりは花を咲かす迄に発芽から数年(普通7〜8年)の年月を要する。
したがって一度乱掘に合うとほとんど再生不能か、再生しても同じく数年の年月を要することになる。
愛好者を騙る盗人に自然の花を愛でる権利はない!!。

自生地は隣り合った3〜4カ所に分かれ、以前数百と思った株数は今春(2000年)いっそう範囲を広げていた。実際、全体で軽く1000株は越えるけっこうなものである。2〜3年生の若芽も多く今後がますます楽しみ。

周囲に人の痕跡は無くまったく自然のものであり、ここに関しての心配は人害よりも↑の鹿による食害にあるかもしれない。

かたくりの花期は短く、地上の葉も実をつけた後はあっと言う間になくなってしまう。それでなくても1月もすれば下草に紛れ、ほとんどそれと判別出来なくなるだろう。
そんな理由からこの地を知る人は決して多くはないと思われる。
願わくばこの状態での保存を心がけたいものなのだが・・・・・。迷った末での紹介となった。
もちろん場所はヒ・ミ・ツ。

 

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