裏妙義/谷急山/裏谷急沢遡行

 最終更新 2011年 8月28日

裏谷急沢妙義山塊最高峰谷急山の西面にくい込む平均斜度50%近い急沢。
上部は逆層の濡れたスラブが数百m続き、冬期のアイスクライムや乾いている時以外沢身に入るのは困難。
妙義山塊ではもっとも急峻な沢で、出合から終始滝やスラブの途切れることなく、ほとんど岩登りの世界。
今回久しぶりに再遡行しあらためてそう思った。
 

グレード : 5  判断基準

ルート : 出合→F3大滝→核心部→見晴らしの滝(大滝)→スラブ状ルンゼ→谷急山北稜→谷急山→北稜→ナイフリッジ→出合

総歩行時間(休憩含まず) : 単独日帰り装備+登攀具にて 登り3〜4時間。下山1.5〜2時間

登山適期 : 10月中旬〜11月下旬 及び 4月下旬〜5月

地形図 : 南軽井沢

駐車場所 : 出合いからわずか先の右路肩に1〜2台、更に先の左路肩に3〜4台の駐車スペースがある。

 

ガ イ ド (98年11月28日現在)

1.入山川を渡り出合いからいきなりF1(7m)を左岸から越える。続くF2(25m)の滑滝は右岸を高巻く。

2.狭いゴルジュから5m前後の滝をいくつか越えると、白い石灰岩と思われる堆積したゴーロとなる。この白岩はいたるところで堆積しているが以前の遡行時にははかったもので、今年(98年)9月の台風による大雨が原因だろう。その後2007年西上州に記録的豪雨をもたらした台風9号を筆頭に、現在は大きく変化している可能性有り。途中の右岸には、人ひとり横になれるほどの奥行きをもった立派な炭焼き跡が残っている。いつも不思議に思うのだが、いったいどうやって沢を上下したのか昔の人のバイタリティには敬服する。

3.右からルンゼが落ち本流が左に曲がると、この沢でもっとも美しく且つ大きなF3「大滝」が現れる。15m程の滑滝上に更に20m近い垂直の滝が落ち、まことに見栄えがいい。登行は乾いていれば右岸のクラックから滑滝を登り、上の滝は右岸を立木伝いに高巻いた後落口に下降する。
尚、濡れてる場合は最初から滝の高さの2倍程度、右岸を大きく高巻く。いずれのルートもトラバースの際、特に山足を滑らせないよう注意のこと。行動はくれぐれも慎重に。

4.F3の上もこの付近独特の柱状節理の滝が連続し早くも核心部の感。F4(6m)を左岸から、F5(15m2段)は1段目を右岸、2段目も右岸から高巻き気味に登る。1段目下から左岸を登れそうであるが、途中濡れていて危険。

5.右に左に九十九折りの狭く急峻なゴルジュにF6、F7、F8・・・と5m〜8m程の滝がいくつも連続し、グングン高度が上がる。いずれも磨かれた柱状節理が美しい岩肌を見せているが、アイゼン跡がけっこう多く無積雪期ではちょっと興ざめ!? ホールドには不自由しないが、やはり濡れてる場合は滑りやすいので要注意。

6.ゴルジュがやや広めとなり滝が5m以下に変わってくると大きく左に曲がり、やがて50m以上はありそうな滑となる。明るくなってきた沢から振り返ると高岩の岩峰がそびえる。

7.左からのルンゼを見送り大きく右に曲がると広い三俣に出る。正面奥にハング気味の立派な大滝「見晴らしの滝」が威圧的にそびえる。高さ15m程アーチ状の垂壁に、2段30〜40mはあろうかという滑を従え大変見栄えがいい。上信越道下り線からよく見えるのはこの部分で、滝上からは沢に入って初めての展望が得られる。左からの濡れたルンゼ奥には8m程の滝があり、右はルンゼと言うより岩壁に近い。

8.以前登った時は沢全体が今回より湿っていて、左のルンゼから本流との間の尾根に入って滝上にトラバースした。今回は不可能と思われた右の岩壁に出合にもあった新しい赤のハチマキがあり、その指示に従うこととする。
尚、大滝は柱状節理から逆層のスラブと変わり、下から近づくことは冬季以外難しいかも知れない。

9.左岸登路は岩壁右を登り中間部で左にトラバース。立木に掴まって直登後もう一度左にトラバースする。最後に1.5m程の段差(岩場)を越えれば大滝落口付近の左岸に出る。岩場全体は逆層だが、濡れてなければ比較的安全なルートで踏跡もはっきりしていた。

10.大滝落口付近からは狭い視野ながら、前述のように初めての展望が開ける。但し、濡れている場合、コケなど見られる場合は絶対に近づかないこと。逆層のため滑落すれば大滝からジャンプすることになる。

11.ここから上部は長大な逆層のスラブ状ルンゼである。沢だけが目的ならばここから引き返してもいいだろう。ここまで単独の場合でおよそ2時間前後となる。
登る場合は水量、沢身、両岸の状況をよく確認しながらとなり、スラブの境目を立木頼りに登るのが無難。沢装備なら思い切って水流内を・・・・^^; って手もあるが、滑ったら大滝から大ジャンプ!!の覚悟があるなら・・・・。確保なしの単独なら立木伝いが現実的!
長いヤブこぎとなるがそのまま沢から離れ、左岸を谷急山まで登りきることも出来る。

12.70〜80m登って左からルンゼを見送る。ここまでは比較的傾斜も緩い。この後は傾斜も増し、安全を考えるならスラブの登行はやめた方が良い。ってことで右岸を立木頼りに登るとやがて最後は6m程の滝に出る。

13.ここは右岸のバンドを慎重に登ることとなり、見下ろすスラブの高度感もあり短いがこの沢ではもっとも緊張するだろう。今回は吹き溜まりとなった腰くらいまである落ち葉を掻き分けながら、足下の安全を確認しながら登った。バンド上はホールドが遠いため、危険と思ったら立木利用の懸垂も考えておくこと。クドいようだが万が一落ちると数百m滑った後、大滝から大ジャンプし肉塊となり果てるだろう。

14.登りきれば濡れたルンゼの三俣となり、右岸の尾根上部を目指してヤブをこぐ。沢から左上に標高差150〜200mで谷急山北稜。北稜には思いの外明瞭な道があり、10分前後で谷急山山頂である。

15.妙義山塊最高峰谷急山山頂は晴れていれば360度の展望で、遠く筑波山も見える。中でも浅間山の姿は圧巻。

16.下山は先の北稜を下る。道は明瞭で迷うことはない。山頂から15分ほど標高1030m付近よりナイフリッジが始まる。よくこんなリッジに道を付けたなと呆れるくらい。筆者が知る限り、道としてはっきりそれと分かるものでは西上州でもっとも険しい。標高730m付近まで約300m続く岩稜は、岩を渡る歩幅が上下に広いためかなり足にくる。浮石や枯れ木も多く細心の注意が必要なのでくれぐれも注意を怠らないこと。やがて裏谷急沢側に柱状節理の大変美しい岩峰と肩を並べるようになると岩稜も終わりは近い。正面上信越道よりやや低くなる頃ようやく岩場から解放される。

17.まだまだ急峻だがやっと安心できる尾根道となり、やがて左に杉植林が見え始め尾根には大きな岩塊が出てくる。ここで道なりに下るのではなく左の植林内に入り、更に左寄りに下って裏谷急沢出合に出る。
杉植林に入らず道なりに下ると堰堤付近に出るがこの堰堤を登るのは困難なため、結局裏谷急沢出合まで戻らなければならない。

 

裏谷急沢は日当たりの関係か、総じて右岸は乾き気味、左岸は濡れてる所が多い。したがって登行も右岸中心となる。又、流域面積が狭いので水量は少ない。
今回のような晩秋の時期、主立った滝の下はルートの取り方によって腰から胸までつかる落ち葉の海を泳ぐことになる。
紹介ルートの沢上部から北稜までのヤブは笹もなく、道のない急斜面で足下に注意していれば比較的歩きやすい。左岸の状況は不明。

   
左)出合のF1  中左)F2上のゴルジュ  中右)F3大滝  右)F4と奥にF5

   
左)二段のF5  中左)中流の無数に連続する小滝群  中右)滝が終わると滑  右)大滝

   
左)上流の長大なスラブ状ルンゼ  中左)最終滝上本流最後のルンゼ  中右)源流部  右)谷急山より裏妙義全景

   
左)谷急山より浅間山  中左)谷急山山頂  中右)よく踏まれた北稜の道  右)北稜の岩稜(ナイフリッジ)

   
左)岩稜の裏谷急沢側は常に垂直  中左)岩稜を振り返る  中右)北稜下部  右)北稜の登山口

 

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