テレマン リコーダー・ソナタ集  No.16 990801
〜大管弦楽に疲れ気味の耳のオアシス〜
 
打楽器・ハープ等に次いで、おそらくは人類が発明したもっとも古い種類の楽器。そんな「リコーダー(縦笛)」によるソナタ集を紹介する。小学生の頃音楽の時間に吹かされるあのリコーダーである。
持ったその途端から音だけなら誰でも出せるのがこの楽器のいい所。おまけにリーズナブルこの上ない。同じ木管楽器でもフルート(横笛)などとは訳が違う。楽器と言うにはちょっとはばかられる程で、まるでおもちゃの類に思われる方も多いだろう。そういう印象が強いからこそこの楽器を「鑑賞に堪えるよう吹きこなしてみろ」、となると以外とこれは厳しいかもしれない。
テレマンが活躍したバロック時代は、「ソナタ」と呼ばれる器楽曲が盛んに作られた。後のピアノ・ソナタ、ヴァイオリン・ソナタの前身である。曲は概ね3楽章〜4楽章、演奏時間10分足らずの小曲であることが多い。
もっともその頃のソナタは便宜的に「○○ソナタ」と呼ばれてはいるが、必ずしもその楽器を指定したものとは限らない場合がある。まったく同じ曲が時にはリコーダー・ソナタに、時にはフルート・ソナタに、またある時はオーボエ・ソナタになったりする。バロック時代の音楽はいい意味で適当な所があり、楽譜に楽器指定のないものが多いのだ。現在テレマンのリコーダー・ソナタと称する曲集も、作者自身がどれほどその楽器を念頭に置いて作曲したかは怪しいところがある。楽譜の音域や演奏法から、「まあ、これだったらリコーダーが適当だろう」ってな具合に、勝手に後から当てはめたものだって多いのだ。まことにいい時代だった。
テレマンはバッハやヘンデルと同時代に活躍したドイツの作曲家である。現代では一般的にバッハやヘンデルの方が遙かに有名であるが、存命当時の名声はテレマンの方がずっと高かった。バッハの音楽はキッチリしていて、真面目な取っ付きにくい印象がある。学究肌的色彩が強く、曲によってはちょっと疲れることがあるのだ。おそらく当時も一般庶民からして見れば、そんな印象に大差なかったと思われる。対してテレマンの音楽はもっと親しみやすい。極めて庶民的な音楽が多いのである。有名な「ターフェル・ムジーク(食卓の音楽)」と呼ばれる曲集など、そもそも目的とするところがBGMそのものであった。
当時の多くの作曲家がそうであったように、テレマンもまた、いくつかの教会や宮廷楽団を経てきた経歴を持つ。あっちこっち動き回った後1721年ハンブルクに移る。そこで死ぬまでの46年間を市の音楽監督として過ごした。安住の地を見つけたのだ。
86歳という長生きした作曲家としても有名なテレマンが、生涯に作曲した曲は膨大な数であった。正確な数値は音楽関連書籍にも載ってないと思うが、おそらく2000曲は下らないだろう。いやはやたいへんな多作家である。作曲目録など未だ系統だった資料も無いらしい。
さて、件のリコーダー・ソナタ集なのだが、後世の管弦楽に慣れ親しんだ耳には実に清々しい。リコーダーというあの単純な楽器が、まったく見た目通りの素朴さで耳と心を刺激するのだ。いや、刺激すると言うより何のてらいもなく素直に入ってくる。この感覚はちょっと他の楽器には代え難い。
リコーダーは奥が深いですぞ。
尚、テレマンのリコーダー・ソナタは千差万別多数のため、個々の紹介は省略する。
 
推薦盤

リコーダー : フランス・ブリュッヘン
テレマン:リコーダー・ソナタ集「忠実な音楽の師」「音楽の練習帳」より
1963年?録音 TELDEC(Warner) WPCC−5673

リコーダーと言えばブリュッヘン(最近は指揮者としての方が有名?)、ブリュッヘンと言えばリコーダー。この楽器始まって以来最高の奏者という形容に疑いを持つ人は少ないだろう。彼の演奏は全て文句は無いのだが、手持ちの代表盤ということで上記を上げておく。
尚、この録音には超強力な超低音が含まれている。スーパーウーハーなどあると、30ヘルツ前後と思われる超低音が響きわたるだろう。この尋常ではなく耳や身体を圧する音圧にはとても耐えられない。もし、そのような超低音再生可能な装置であればOFFとして聴きたい。原因はマイクの立て付けの悪さ+エアコンの風が当たっているものと思われる。録音時のプレイバックでは気付かなかったのだろうか?。
 
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