マイ・カメラ    980801  No.13

記者 : 「この事務所にはいくつか写真が飾ってありますよねえ。好きなんだろうなってよくわかるけど、天野さんのカメラ経験はどのくらいになるんですか?。」

天野 : 「初めて自分のカメラで自分の意志で写真を撮ったのは8才くらいの時かな。もう30年以上前になる。プラモデル屋や写真館で売ってた、当時600円くらいの玩具カメラってやつ。子供としてはものすごい大枚を叩いて買ったことになるよな。今の使い捨てカメラ(レンズ付きフィルム)と違って、普通のカメラのようにフィルムを自分で入れて写すんだけど、これが生意気にちゃんと写るんだよね。そういうカメラが今でもあるのか知らないけど、もしあったら懐かしいねえ。」

記者 : 「そんなのがあったんですかあ?。」

天野 : 「さすがにカメラはどこかにいっちゃったけど、当時撮ったフィルムだったらちゃんと残ってるよ。」

記者 : 「へえー、後で写真見せてくださいよ。」

天野 : 「いいよ。
その頃はさあ、ビー玉とかメンコとかもっぱら外で遊ぶものが多かったから今とは大違い。俺にとっては当時からカメラそのもののメカに興味があったし、周りの風景や友だちが記録に残るってことで子供心に面白くてね。そのカメラで小学生の4〜5年間に120〜130枚くらい撮ったのが残ってる。30年前の自分や周りの記録だからけっこう貴重だと思うよな。」

記者 : 「そうでしょうねえ。」

天野 : 「その後中学生になってからは、親父が使ってた2眼の重たいカメラを借りて修学旅行に持ってったりして、出かける時にはけっこう必需品っていう感じだったな。
高校からは本格的に登山を始めたから、今度は軽量化のために「コニカC35」っていう小さな2眼にして。たぶん誰かのお下がりだと思うけど、買った覚えはないしどうやって手に入れたのかまったく記憶がないんだよな。これもやっぱり食料の次に大切な装備品といったところだった。他の装備は忘れてもカメラと時計だけは怠りなかったっていう感じだよね。」

記者 : 「何を主に撮ってたんですか?。やっぱりここにあるような山とかそういう風景ですか?。」

天野 : 「友人と行くときはもちろん人も撮るけど、ほとんど単独登山だったからもっぱら風景だったな。それも極力、人や人工物は入れないようにして。今でもそれは変わってない。だから子供のころの写真はあるけど、中学生から今までの自分の写ってる写真っていうのはあんまりないんだよなあ。」

記者 : 「それだけ写真を撮っててもったいないですねえ。」

天野 : 「まあな。でも今更しょうがねえから。全然ないわけでもないし。」

記者 : 「今、使ってるカメラはどうしたんですか?。」

天野 : 「あれは東京に出てすぐ買ったやつ。12回ローンだったかなあ。やっぱり山に持っていくのが第一だったし、自分の体力的な問題もあって軽量化にこだわった末にオリンパスの「OM−2」にしたわけ。当時OM−2は1眼でもっとも小型軽量のモデルだったし、TTLダイレクト測光っていうウリが気に入って。今でこそTTLダイレクトなんて1眼では当たり前、っていうかもっと進んでるけど、その頃はOM−2が世界初の採用だったんだよね。ほんとはニコンのF2フォトミックもいいなと思ってたんだけど、何せF2は重く大きかった。持った感触は大きさも重さもOM−2の2倍くらいには感じたもんな。」

記者 : 「じゃ、もうそのカメラを20年くらい使ってるわけですね。」

天野 : 「そういうことになるな。
つい先日登山中に初めて故障しちゃって。幸い帰り間際だったんでよかったけど、ちょっと焦ったよな。それまでオプションのストロボが一度接触不良になったくらいで、本体はまったく問題なくてよくもってくれたと思ってる。結局修理に出して直しちゃったけど、この20年間の山行すべてに同行した唯一のモノだから、たとえ直らなくてもちょっと捨てられない。
一時は20年近いロングランの某機を買おうと金まで持ってカメラ屋に出掛けたよ。ただそいつは露出補正がやけにやりにくくて、けっきょくフィルムだけ買って帰って来ちゃった。俺の写真はほとんど絞り優先のオートで撮ってるけど、全体の1/3〜半分くらいの写真は何らかの補正を加えてるからね。それがやりにくいというのはちょっと許せなかった。
それに最近の一眼カメラで魅力的なものってないもんな。みんなフルオートの初心者仕様になっちゃたり、本格的なものはやたら(値段が)高く重かったり。」

記者 : 「なるほど。ホームページで写真のコーナーがありますけど、あれはみんなそのカメラで撮った写真ということですね。」

天野 : 「そういうこと。
ただ50mm標準と28mm広角しかレンズを持ってないから、ちょっと変化に欠ける写真ばかりだけどね。
この前の春先、南牧(西上州の山村)の「三段の滝」に行った時、水量がけっこう豊富ですごく絵になってて。登山中だったので三脚も何も持ってなかったんだけど、どうしても流れた水流を撮りたくて、無理を承知の立ち姿でスローシャッターを切ったんだよな。絞り優先のメーター読みで1/4秒くらいってわかってたから、呼吸を何度も整えて「カッ・・・・チャ」っていう感じで。
まあしかし余りの遅さにこりゃもう絶対ブレたなと思って、スローシャッターでは1枚しか撮らなかった。ところがこれが現像してみると奇跡的にブレてない。大きく引き延ばして焼いてもピントピッタリでびっくり。俺って才能あるんじゃねえかって、マジで思ったっけ。」

記者 : 「そういう経験が積み重なってハマッちゃうんでしょうね。」

天野 : 「まあそう言うことだな。あれ、今思うと重いザックを背負ってたから良かったんだよな。」

記者 : 「えっ、どういうことですか?。」

天野 : 「オンロードのスポーツバイクは重心が低いけど、オフロードバイクは高いだろ。」

記者 : 「????」

 

三段の滝写真はこちら

 

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