東洋時計/赤漆塗り木製筐体小形置き時計
新規追加 2010年 9月 1日
 
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概略寸法 全高8.5cm×幅19.5cm×厚み3.5cm
文字板 ペイント文字板/2インチ
仕 様 毎日巻き
時 代 大正期
 
東洋時計の漆塗り木製筐体置き時計毎日巻きです。精工舎、東京時計と並ぶ東の雄、東洋時計! っと言っても、置き時計、目覚まし時計の話しであるのは、前回の東京時計と同じなんだけどね (^^)

東洋時計は明治34年(1901年)、吉田庄五郎が東京上野に開店した吉田時計店をルーツとしています。開店当初は外国時計の輸入販売を行っていましたが、やがて大正9年巣鴨に東洋時計製作所を設立し置き時計製造に乗り出しました。元々主力はその置き時計・目覚まし時計であり、後年数々の変わり時計でも有名となります。また、少数ながら掛け時計も製造したようで、けっこう希少な部類と言って良さそうです。
昭和10年代から戦中は他の時計メーカー同様国策として軍需産業に転換。その混乱期を経て戦後は東洋時計製造株式会社として再開し、後に置き時計部門が新東洋時計株式会社(現 株式会社トーヨー)、腕時計部門がオリエント時計株式会社として分離独立しています。

ワッペンのような、あるいは紋章のような輪郭の中に重なった「TC」がデザインされたロゴは、置き時計、目覚まし時計ではすっかりお馴染みでしょう。この時計はその紋章ロゴが登録される前の時計と思われ、文字板上には「ToYo」と長音記号付きのローマ字で表記されています。先のロゴは大正12年の登録ですから、東洋時計として設立3年以内の時計と思っていいでしょうか?

外観は全体に和のテイストたっぷりで、赤漆塗りの木製筐体に白地の唐草のような文様が前面と天面にデザインされています。機械はお馴染みの小型置き時計機械で、ゼンマイがいっぱいに巻き締められた状態でまったく動く気配の無い状態での入手でした。
 
 
入手時外観
入手時外観

当たり等による角の小さな凹み、多少の塗装剥げと文字板枠のめっき剥がれ、機械も少し傾いて・・・・^^;

とは言え、経年による細かな傷みはともかく、大きな損傷なく十分良く残っている方でしょう。赤漆塗り木製筐体は全体に黒ずみやや薄汚れた感じ。ツマミ類を含めフルオリジナル状態のようです。前述のようにゼンマイは巻けず機械は動かず状態。ガラス風防は当時のゆらゆら平ガラスです。
 
入手時機械
入手時機械

裏蓋を外してパッと見、目立つ修正や傷みは無さそうですが・・・・なんだか妙に脂ぎった機械です。

その油はまさに「脂」という感じで、手で触るとベトベト糸を引いて粘つきます。ゼンマイも固く締まり、まるで接着剤でも流したよう。それでも取り出して3番車4番車あたりに軽く力を加えると、とりあえずテンプは振動しました。どうやら駆動力が上手く伝わってないようです。って言うか、巻き締められたゼンマイがくっついちゃって、駆動力そのものが出てないみたい?
 
洗浄後機械
洗浄後機械

っで、まずは機械単体として洗浄と軽く再注油を行います。

とりあえずそれで振りを与えれば動くようになり、ゼンマイも緩んできました。っが、何とも不安定。良くて20〜30分、時には10秒と保たず止まっちゃうことも。そこでテンプ周りを中心にルーペでよくよく観察すると、まずテンプの振動中心があっていません。止まる時は毎回テンプが外向きに振れた時でもあります。更にテンプ、アンクル共にピンが妙に傾き、どうも止まったテンプを回してはいけない方向に無理して回したような・・・・^^;

地板にメーカーを示す刻印はありませんがゼンマイ近くに、「6 ・」あるいは「・ 9」と刻印があります。
 
試運転
試運転

精密ドライバーやピンセットを駆使?して修正を入れ、使用状態となる縦置きで試運転。

っと言うは易しだけど・・・・そのへんは数打ちゃ当たるで培った技術と素人のいい加減さで・・・・^^; 作業写真が撮れればいいのですが、それにはもう1本手がないと肝心なところが撮れなくてm(_ _)m 仕事でするなら全分解するべきところでしょうけど、転売目的の時計でもないし。
っで、まだ多少の不安定さを残しつつも、とりあえず長時間動くようになりました。
 
部品一式
部品一式

メンテの終了した部品類です。作りからして決して高級とは言えないけど・・・・当時馴染みの作り、ではありそう?
 
文字板
文字板

ブリキにペイントのオリジナル文字板を別のブリキベース上に載せ、針穴をハトメでカシメ固定しています。

この作りは前回の東京時計とまったく同じです。多少の汚れやスレも経年のうち。状態は年代からすれば十分良好でしょう。12時下には「ToYo」とはっきり誇らしげです。裏面に修理歴など履歴を示すものはありませんでした。
 
文字板周り組立
文字板周り組立

針を差し込み、清掃した枠やガラスと合わせ、3個所のネジ留めで機械周りはOK。2:34〜41まで時間経過は7分ほど。実作業は1〜2分ってところかな?
 
筐体へ組み上げ
筐体へ組み上げ

上がった機械を筐体に差し込み、裏蓋をナット固定しツマミ類を付ければ完了! 木製筐体は上写真のようにソリッド板のくり抜きです。
 
完成品
レストア完了

ストロボ光や背景のせいもありますが、汚れを落とし鮮やかな赤漆の蘇った筐体が大変目を引きます。

このまま神社の拝殿とかに置かれていたら、備え付けかと思わせるような純和風のデザインがいい雰囲気。微妙にずれて細かな形違いの文様はいかにも手書きでほほえましくあります。機械動作的には多少の不安定さも残りましたが、いい状態に上がったと思います。
 
 
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