米 ANSONIA/真鍮筐体置き時計
最終更新 2010年 8月13日
 
米 ANSONIA/真鍮筐体置き時計
概略寸法 全高17cm×幅11.5cm×厚み8cm
文字板 ホーロー文字板/3インチ
仕 様 8日巻き/小秒針付き
時 代 1900年代初期頃
 
アメリカの名門「ANSONIA(アンソニア)」の真鍮筐体置き時計8日巻きです。

アンソニアはセス・トーマスやイングラハムらと並ぶアメリカの名門で、1854年創業の古時計メーカーです。人気の古時計メーカーとしてはアメリカでもセス・トーマス、ニューヘブンに次ぐ3番目に古い創業年度であり、1929年まで有名な「HABANA(涙の滴)」型時計など数々の名品を作り上げました。中でも掛け時計、置き時計の機械に見られる梁が半円状に弧を描いた地板はアンソニアタイプ(スタイル)とも呼ばれ、国内でも数々の時計メーカーにコピーされています。

上記のハバナに代表されるど派手な掛け・置き時計があまりに有名なアンソニアですが、こちらは極めてシンプルな真鍮筐体製置き時計です。墓標(墓石)か位牌か記念碑か? これを何型と言うのでしょうか? 同じ機械を使用したもう少し背の高い時計、低い時計、柄付き、絵付きなど、あれこれバリエーションもあるようです。
その機械は掛け時計用かと思わせる大きなゼンマイを背中に背負った8日巻きで、後に良く見る香箱入り8日巻きゼンマイ時計の先駆のような印象があります。
下画像でも分かるように当初の外観状態は決してきれいとは言えませんでした。それでも動かないというジャンク機械は簡単なメンテ後動きだし、シンプルで筆者好みの時計として蘇りました。

詳しい製造年代は分かりませんが、1900年代初期頃かと思われます。
 
 
入手時外観
入手時外観

汚れの目立つ錆び錆び筐体に機械は傾き・・・・^^;

それはともかく秒針が(右上)・・・・^^; っと言うのも機械にガタがあり、前後にゴトゴト動きます。それで細く弱い秒針がこんな姿に・・・・
筐体は真鍮の角フレームと板からなり、ダイキャストのベースで支えています。天面と左右はフレームと一体ですが、時計の付く前後の板は嵌め込みのようです。ゴールド色は真鍮の色ではなくめっきされてるようですが良く分かりません。汚れや錆はともかく、先の秒針以外に外観上目立つ傷みはなさそうです。
とは言え軽く振ると機械のガタとは別のカラカラ音がして、裏板が外れそうにずれて(左下)いました。また、ゼンマイ巻きツマミと同軸に付く針回しのツマミが紛失しています。

機械はゼンマイが巻けず動かないというジャンクでの入手です。良くある状態ですね。
 
入手時機械
入手時機械

取りだした機械は多少の綿埃、汚れに加え、まったく油っ気無い機械です。

何年くらい眠っていたのでしょうか? かなりの期間メンテされた様子はありません。
よくあるゼンマイが巻かれたまま動かない状態で、ゼンマイ面にはけっこう錆が浮き始めていました。そのゼンマイは一般的掛け時計用ゼンマイと同幅の強力なものです。機械が妙にガタついた原因は3本足中の1本、地板にカシメられるナットが外れていました。右写真で丸印のナットが、本来矢印先の地板の穴にカシメられていたんですね。機械自身は刻印のない無名機械で、パッと見先の足以外に目立つ傷みはなさそうです。
 
分解状態
分解状態

あらかた分解して・・・・なんだ?この異物は?

筐体の3面はやはり板がフレームにろう付けされていました。振った時聞こえていたカラカラ音の正体は、外装の真鍮板を留めるレールが1本外れていたものです。上の写真で裏板がずれていたのも、長い方のレールが1本紛失しているのが原因でした。

化粧枠から機械を抜くと、文字板とブリキベースの間からカラカラに乾いた異物がポロポロ出てきました。文字板はこの時点で載せてあるだけで、どうやらベースに固定する接着剤の変質した姿のようです。
 
文字板
文字板

文字板はホーロー製と奢っています。

ホーローのヒビ割れは古時計ではほとんど想定済ですが、表面に剥がれがなければ良しと言えます。状態は時代経過からすれば十分満足いく範囲でしょう。上から「8DAY」、ロゴマーク、6時下欄外に「Made by Ansonia Clock Co,, U.S.A.」とあります。

裏面の一部剥がれは接着剤を盛っておきました。全体にヒビ割れてはいますが、当面、現状以上ポロポロ落ちることはなさそうです。
 
機械
機械

なんてことはなく、清掃&注油だけで動き始めました。

幸い錆はゼンマイ面最外周にやや目立っただけで、機械の主要部は概ねきれいです。錆びてることの多い鉄支柱がきれいなことからも、外観から思ったほどには保存状態も悪くなかったようです。テンプ周りにも目立った傷みや磨耗はありません。
 
筐体
筐体

筐体の作りは単純です。

コの字形のフレームに前述のように天板と側板がろう付け固定され、時計取り付けの丸穴が開く前後の板は差し込みです。それをダイキャストの台座裏から四隅のネジで固定します。

1本紛失していたレールは右写真のように台座と側板のわずかな隙間を塞ぎ、なかなか手の込んだというか、現代の目から見れば台座に溝か段差を付ければいいのになんて思います。このように比較的密閉状態に近いので、かなりの年月動かされなかったと思われる割には機械もきれいだったのでしょうか?
 
部品一式
部品一式

メンテの終わった部品一式です。

機械はけっきょく清掃&注油とテンプの受ネジを締め込んだだけ。筐体と裏蓋など金属部品は耐水ペーパーで簡単に磨き、他は乾拭きと面取りの曲面ガラスである風防だけ水洗いです。このうち筐体は磨きすぎると簡単に真鍮の地肌が見えてくることが分かり、汚れの目立つ部分のみ軽く撫でるように磨き、側板はほとんど乾拭きのみです。
 
機械足補修
機械足補修

外れていた足のナット1個所を半田付けして固定します。

清掃した機械に外れたナットを半田付けします。穴に嵌めて再カシメ出来ればよかったのですが、それには地板を外さなければならず・・・・^^;

ってことで横着して半田付けを行います。誤って半田が流れないよう近くのナットを外しておき、大きめの100W半田ゴテで素早く熱をかけスッスッと3回程度糸半田を流して終了。すぐ横にヒゲゼンマイ長調整の歯車もあるので、そちらに流れないよう注意しながら行いました。
 
文字板周り再組立
文字板周り再組立

文字板とブリキベースを接着して組み立てます。

一部いびつな形のブリキベースは、化粧枠から裏蓋側に延びるネジなど避けるためのようです。そのベースに後でも外せるよう無溶剤性合成ゴム系接着剤で3点、ズレない程度に軽く文字板を接着します。

曲がりを直した秒針など差し込み、化粧枠にガラスなどといっしょに先の3本足をネジ固定してOK!
 
完成品
完成品

経年色たっぷりですが、まずまずいい状態に上がりました。

もちろん動作に問題なく、10日間くらいは動くようです。ツマミ紛失で針が回し辛いのは玉に瑕ですが、回せない訳じゃないので良しとしましょう。
 
新規追加 2010年 4月22日
 
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